ISUKE INC. | イスケ・インク

Communication Design | コミュニケーション・デザイン

Director | Gaku Okubo/大久保學

クリニックのデザイン事例

YOSHIMURA CLINIC  クリニック・アイデンティティ・デザイン 

YOSHIMURA CLINIC 正面入口(藤沢市)  
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医療も選ばれる時代に

病院、クリニック、個人開業医院の世界も診療科目や立地により、厳しい競争と無縁ではありません。ドクターの技量と人格が、患者さんの満足の源泉であることはもちろんですが、彼らの心の中に宿る信頼感やイメージ(クリニックのブランド形成)は、デザインによる工夫で増幅することが可能です。それは、既存の受診者のリピート選択を促すことになります。また厳しい競合環境では、新しい患者さんの受診先の選択時や初診時の安心感や信頼感の獲得向上につながります。このことに関しては医療とはいえ、他の一般消費者を対象顧客とする業界と変わることはありません。
志を持って地域での医療に専心なさる医師の方とそこに従事する人々の熱意を、デザインから支援させていただく。それが我々の仕事です。神奈川県のクリニックの移転に伴うリニューアルの例をご案内いたします。(このデザイン事例は、グラフィック社刊『ブランディング・デザイン3』に所収されています)

将来の「拡がり」を可能にすること

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顧客の増大に対応すべく決定された移転を機に、既に定評の高かった耳鼻咽喉科を核に、内科を加え、さらに将来的にはより多様な科目と専門医師を加え地域医療施設としての拡充をしたいというのが、クライアントである医療法人の希望であり、長期的な方針でした。デザイン構築上の前提として留意した点は、その拡張性の担保と、長期にわたっての定着を目指すことでした。画像/右は、早い時期のデザイン提案の一つですが、名称や表記の展開可能性の案として検討の材料としました。
イスケ・インクでは、クリニックに限らず、ブランディングや企業のアイデンティティデザインの構築には、初期の取材や調査から多方向の可能性を探り、クライアントにとって最適なものを、対話を通じて絞り込み掘り下げるようにしています。


伝わることと使いやすいこと

yosji_planA_L.jpgまた、現状の受診者が乳幼児からシニアまで幅広く、今後もその立地を考慮するとその傾向に大きな変化は予想されませんでした。そこで、先鋭的だったり特定の年齢や属性の人々にしか響かないようなデザインのトーンよりも、ソフトな印象であること、シンプルであること、視認性の高いこと、などを制作上の条件にしました。また医療施設であるので、優しい癒しへの期待を裏切らないものであることはもちろんです。画像/左は、新施設建築中に決定いただいた提案デザイン原案です。(クリックで拡大)イニシャルのYを、伸びていく双葉に重ねた柔らかなマークとし、欧文のロゴタイプとの組み合わせで基本のロゴとすることで、将来の包括的なクリニックのCIの拡張性を担保しました。建物が萩原幸枝氏設計による存在感のあるモダンな印象でしたので、グラフィックの色と形をソフトにすることで、医療にとって大事な先進的な施設環境イメージと、治療行為における人肌を感じさせるバランスを図るという意図もありました。
基本案の決裁後は、それぞれの展開物の制作や仕上げに向けて、建築家の方や多様な製作の専門会社と細部をつめる作業に入ります。納期を外さない日程管理のもと、最も高いクオリティを求める方々と仕事ができることは、デザイナーの喜びです。

「強み」を活かすこと
正面入口ドアサイン
yoshi_door1S.jpgクライアントの医療法人が、顧客サービスに熱心にとりこまれていて、早くから、PCや携帯へ受付番号案内を送るというシステムを専門会社と独自に開発、運用されていました。また、働くスタッフの方々は皆さんロイヤリティもモチベーションも高く、長期にわたって勤務なさっていて、これは顧客にとっても何よりの安心感や信頼感のよりどころになっています。人間性を重視し思いやりに満ちた吉村恵理子院長の診療姿勢が、このクリニックの優しさに満ちた安心の印象をもともと創りだしていたのです。これは、ブランド形成の一般論としても重要なポイントです。顧客の心の中の好イメージは、デザインだけで一朝一夕に醸成できません。固有の「強み」を支援し有効に蓄積するためのフレームづくりが、イスケ・インクのデザインです。

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上/駐車場側からの入口
ロゴマークが子供たちのガラス衝突防止の
意匠として配列されている

左/駐車場サイン





「らしさ」を大切にすること

yoshi_reception3_240.jpgどういうイメージを達成したいか、というクライアントの希望については、自然が持っている癒しのイメージを大事にと、方向性をはっきりお持ちでした。例えば環境音は、自然の音で創るクリエーターがこのクリニックのためにオリジナルで制作されました。
デザイン案を最終決定する際に、クライアント自身が美しいと感じるか否か、という選択基準「も」、大事なことだと思います。一般論としてですが、社会や人々のためでありつつ、起業家の方が事業を自己実現の証しとも捉えるのは不自然なことではありませんから。もちろん、そうした決定に至るまでに目標や諸与件の合意に基づいて、合理性があり社会倫理に反さない有効な提案と選択肢を用意するのが我々の責務だと考えます。感覚だけを優先するのはデザインとは言えません。

一貫性を保つこと
下/移転の案内状と封筒 
yoshi_envelope01s.jpgこの事例では、幸いに、既存顧客にクリニックに対する信頼が醸成されていたので、大掛かりなプロモーションや広告は不要でした。それを裏切らず長期的に、良質なイメージを蓄積しつづけられるフレームをデザインで築くことがゴールでした。
とはいえ環境が変化した場合や、新たに開院される場合、また競合条件が激しい場合は、事例のような顧客が目にし触れる部分でのデザインによるラッピング化だけではなく、臨機応変なプロモーション/広告活動も必要になってきます。イスケ・インクは、立ち上げ時のデザイン構築だけはなく、広告やプロモーションの提案や制作をお手伝いしてまいります。
(記/大久保學)


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クレジット
クライアント/医療法人恵信会
よしむら耳鼻咽喉科  内科・呼吸器科
院長・医学博士/吉村恵理子医師

日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
副院長/吉村信行医師
日本呼吸器学会指導医、日本呼吸器内視鏡学会指導医
施設建築設計/萩原幸枝氏 シーン設計工房
CIデザイン/イスケ・インク 大久保學


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